「投資は難しいし、リスクがあるから怖い」
「興味はあるけど、やり方がわからない」
投資が必要とよく聞きますが、このように思ってなかなか始められない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ファイナンシャルプランナーの私がつみたてNISAのしくみや始め方、2024年から始まる新NISAについてわかりやすく解説します。
つみたてNISAが投資初心者に向いていることが分かり、NISAを活用して資産形成が進む将来を想像できるようになるでしょう。
投資は長期間行うほど大きなメリットが得られます。長期間投資するには早く始めることが重要です。NISAについて学び、投資への一歩を踏み出してください。
NISAとは?2つのNISAのしくみと違い
NISAは投資を通じて資産形成を促進する目的で導入された制度です。
NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があります。それぞれの違いを解説しますので、どちらがあなたに向いているか判断するヒントにしてください。
NISAとは?
NISAとは一定の条件下で行われた投資の利益に対して課税されない制度です。
通常は投資で得た利益に約20%の税金がかかります。しかしNISAは、NISA口座内で年間の上限額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益には、税金がかかりません。
正式には少額投資非課税制度といいます。イギリスのISA(Individual Savings Account)を参考に導入され、NIPPONの頭文字「N」をつけてNISAと名付けられました。
NISAは少額からでも始められ、節税効果があるため、投資初心者にとっては魅力的な制度です。
一般NISAとつみたてNISAの違い
NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があります。大きな違いは非課税期間と年間投資額です。
非課税期間は一般NISAが5年、つみたてNISAは20年。投資上限は一般NISAで120万円、つみたてNISAなら40万円です。
ほかにも投資対象となっている金融商品や投資方法などに違いがあり、次の表のとおりとなっています。
一般NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
非課税期間 | 5年 | 20年 |
年間投資額 | 120万円 | 40万円 |
投資対象 | 株式・投資信託 | 投資信託 |
投資方法 | 制限なし | 定期的な積立購入 |
参照:金融庁 NISAとは?
つみたてNISAは少額で定期的に投資を行い、長期間かけて資産を増やします。投資対象は金融庁が定めた基準をクリアした厳選された商品のみと限定されているため、選択肢が少なく初心者でも始めやすい投資方法です。
一般NISAは投資対象の選択肢が広いため、自分で具体的な投資対象を選びたい方や、より大きな金額を投資したいと考えている人に向いています。
一般NISAとつみたてNISAは併用できないため、どちらか一つを選択しなければなりません。
それぞれの特徴を理解して、あなたに合う方のNISAを選んでください。
つみたてNISAのメリット
つみたてNISAには次のメリットがあります。
- 投資対象は厳選された金融商品のみで安心
- 定期的な積立投資が可能
- 20年間の長い非課税期間
つみたてNISAのメリットを知ることで、投資へのハードルが下がり、初心者にも始めやすい制度であることが分かるでしょう。
投資対象は厳選された金融商品のみで安心
つみたてNISAは投資対象が金融庁によって厳選されているため、投資初心者でも安心して投資を始められます。
つみたてNISAの投資対象は非課税期間が20年と長く、長期間の運用が想定されるため、金融庁によって少額投資が可能な長期投資に向いている商品のみに厳選されています。
つみたてNISAで購入できるのは、低コストの投資信託やETF(上場投資信託)です。
販売手数料が0円で信託報酬が低く、頻繁に分配金が支払われない商品など、法令上の条件をクリアした商品が選ばれています。
定期的な積立投資が可能
つみたてNISAは長期間にわたって定期的な積立投資ができるため、投資初心者でも手間をかけずに安定的な投資が可能です。
積立投資とは一定の期間ごとに一定の金額を投資する方法です。
自動的に毎月同じ日に同じ金額を投資するよう設定しておくことで、忙しくても手間をかけずに投資を継続できます。
また、積立投資により分散投資の効果が得られます。分散投資とは投資のリスクを減らす方法の一つです。
一度に大きな金額を投資した場合、タイミングにより大きな損失を出す可能性があります。しかし、少額を定期的に投資すれば一回あたりの投資価格が平準化され、投資のリスクを軽減できます。
20年間の長い非課税期間
つみたてNISAは非課税期間が20年と長いため、長期運用が可能です。
運用期間が長いと複利効果が大きくなりやすく、元本割れする可能性も低くなります。
複利効果とは、投資で得た利益をさらに投資して利益を生み、雪だるま式に利益が増えていくことです。
つみたてNISAで選ばれているのは分配金を受け取らずに再投資する商品です。分配金を元本に足して次の投資にまわすため、長期運用することで複利効果が増幅します。
また、運用期間が長いと短期的な市場の変動に左右されないため、最終的に元本割れするリスクも減ります。
つみたてNISAのデメリットや注意点
つみたてNISAにはメリットがある一方で、デメリットや注意点もあります。次の3つの注意点を解説します。
- 元本割れのリスクがある
- 損益通算ができない
- 非課税期間終了後は課税口座へ移管か売却の2択
つみたてNISAは投資なので、デメリットがゼロにはなりません。注意点をよく理解したうえで、つみたてNISAを始めるかどうかの判断材料にしてください。
元本割れのリスクがある
つみたてNISAは投資のため、元本割れのリスクがあります。
元本割れとは投資した金額よりも少ない金額が手元に残ることです。投資対象となる金融商品の価格が下落すると元本割れが発生します。
つみたてNISAでは投資対象が厳選されていますが、元本割れのリスクがなくなることはありません。市場の変動により、投資した金融商品の価格が下落する可能性は常にあります。
投資とは元本割れなどのリスクを受け入れて、将来的に利益を期待する行為です。元本割れは、つみたてNISAだけでなく、すべての投資に共通するリスクです。
しかし、積立投資を長期間続けることで元本割れの可能性は低くなります。一時的に元本割れしてもそのまま持ち続ければ価格が上がる可能性が高いからです。
元本割れのリスクを理解したうえで、どの程度のリスクなら受け入れられるのか考えることが大切です。また、長期的な視点で投資を行うことで一時的な価格の下落から回復する時間を確保できるでしょう。
損益通算ができない
つみたてNISA口座には税金がかからないため、つみたてNISAで出た損失と、ほかの特定口座や一般口座で出た利益とで損益通算ができません。
損益通算とは、投資で得た利益と損失を相殺して税金を計算することです。損益通算ができると、全体で計算した利益だけに課税されるため、節税効果があります。
たとえばA口座で20万円の損失を出し、B口座で30万円の利益を得たとしましょう。通常は20万円の損失を30万円の利益と相殺し、10万円に税金がかかります。
しかし、つみたてNISAは損益通算ができないため、B口座で得られた利益の30万円全額に対して税金がかかります。
つみたてNISAで得た利益は税金がかからない一方で、損失を出した場合でも、ほかの投資の利益と相殺できない点がデメリットです。
非課税期間終了後は課税口座へ移管か売却の2択
つみたてNISAの非課税期間終了後の選択肢は次の2択となり、翌年の非課税枠には移行できません。
- 課税口座へ移管する
- 売却する
課税口座へ移管した後に出る利益には税金がかかり、金融商品の価格は当初の購入価格ではなく、移管時点での価格にリセットされます。
たとえば、40万円で購入した金融商品が30万円に値下がりした時点で非課税期間が終了し、課税口座へ移管した場合、移管後は30万円で購入したものとして扱われ、売却するときに課税されます。
しかし、つみたてNISAはいつでも売却可能です。20年間待つことなく、利益が出ていれば非課税期間中に売却する方法もあります。
非課税期間終了まで持ち続けて売却するという選択肢もありますが、終了時に利益が出ているとは限りません。
つみたてNISAの非課税期間終了後の取り扱いは、投資の目的、リスク許容度、税負担などを考慮したうえで慎重に選択しましょう。
つみたてNISAの投資シミュレーション
つみたてNISAで積立投資をした場合、将来いくらになるのかシミュレーションしてみました。
つみたてNISAの年間投資可能額は40万円のため毎月の積立金額は3万円とし、積立期間は20年。想定利回り(年率)は3%、5%、7%の3パターンで計算しました。
年率3%の場合は最終積立金額は984.9万円、5%なら1233.1万円、7%になると1562.8万円です。年率が7%の場合は最終積立金額が元本720万円の倍以上の額になります。
年率 | ①元本 | ②運用収益 | ①+②最終積立金額 |
---|---|---|---|
3% | 720万円 | 264.9万円 | 約984.9万円 |
5% | 513.1万円 | 約1233.1万円 | |
7% | 842.8万円 | 約1562.8万円 |
次のグラフは毎月3万円を20年間、年率7%で運用した場合の積立金額と運用成果を示しています。
10年目の元本と収益の合計は519.3万円ですが、投資期間を20年にするとおよそ3倍の1562.8万円になりました。長期間の投資により、複利効果が効いていることが分かります。
参照:金融庁 資産運用シミュレーション
つみたてNISAを利用して少額でも積立投資を長期間継続すれば、大きな運用収益が得られると共に、運用収益には20年間税金がかかりません。
積立投資の効果は時間と共に大きくなり、未来の資産形成をサポートしてくれます。つみたてNISAは投資初心者でも手軽に始められるため、早めに始めて時間を味方につけましょう。
つみたてNISAの始め方4ステップ
つみたてNISAを始めるための4つのステップを順番に説明します。順番どおりに進んでいけばNISA口座を開設し、投資をスタートできます。難しい工程はないので、一緒にやってみましょう。
最初に、つみたてNISA口座を開設する金融機関を選びます。おすすめの金融機関はネット証券会社です。
ネット証券会社は銀行や実店舗のある証券会社と比べて手数料が安く、クレジットカードを使って投資できたり、ポイントサービスがついたりとサービスが充実しています。
- 100円から積立投資が可能
- ポイント還元サービスが充実
- 投資金額などに応じてポイントが増加
SBI証券は最低積立金額が100円からと低く設定されているので、
投資初心者や少額から始めたい方におすすめです
- 手続きがシンプルで分かりやすい
- サイトのデザインが初心者でも見やすい
- 条件に合った方法で積立投資をすれば楽天ポイントが受け取れる
普段から楽天グループのサービスをよく利用する方には、
楽天証券がおすすめです
つみたてNISAの口座は1人1つしか作れません。また、金融機関の変更は年単位でしかできず、手続きにも時間がかかります。
最初にしっかり比較検討して、あなたに合った金融機関を選びましょう。
金融機関を選んだら、次はつみたてNISA口座を開設します。ネット証券であれば、金融機関のウェブサイトから簡単に開設できます。
証券口座の開設には、マイナンバーカードと本人確認書類が必要です。画面の案内にしたがって必要な情報を入力し、本人確認書類を提出するだけで終わります。
手続き終了後、口座開設されるまでには少し時間がかかる場合もあるため、余裕を持って開設しましょう。
口座開設が完了したら、投資する商品を選びます。
つみたてNISAでは、投資信託やETF(上場投資信託)が投資対象です。あなたの投資目標やリスク許容度に合った商品を選んでください。
投資初心者には、手数料が低く、分散投資されたインデックス型の投資信託から始めることをおすすめします。
最後に毎月の積立金額を決定します。つみたてNISAでは、年間最大で40万円まで投資可能です。年間投資可能額を12か月に分けると、毎月最大約3万3千円が積立金額となります。
自分の月々の収支を見直し、安定的に投資できる金額を設定しましょう。
金額を決めた後は、金融機関のウェブサイトやアプリで積立設定を行います。積立日や積立金額を指定して設定が完了すれば、後は指定日に自動的に投資が行われます。
2024年以降の新NISAについて
NISAは2024年から制度改正され、より利用しやすく便利な制度になります。2023年までのNISAと2024年以降のNISAの主な違いは次のとおりです。
- 非課税期間が無制限
- 成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能
- 年間投資額の拡大
- 非課税保有限度額の拡大
現行のNISAには投資できる金額や期間に制限があります。
一般NISAでは年間120万円までの投資が可能で、非課税期間は5年間です。つみたてNISAでは年間40万円までの投資が可能で、非課税期間は20年間です。
また、一般NISAとつみたてNISAは併用できないため、どちらか一方を選ばなくてはいけません。
2024年から始まる新NISAでは、制限が大幅に拡大または撤廃されました。
年間投資限度額は成長投資枠(旧一般NISA部分)が240万円、つみたて投資枠(旧つみたてNISA部分)が120万円、合わせて年間360万円です。
また、非課税期間の制限も撤廃され、新NISAでの投資は無期限で非課税となります。
新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠が併用可能なため、より柔軟な運用が可能です。
投資方法も一度に大きな金額を投資したり、毎月少額を積み立てたりと選べるようになりました。
なお、2023年までのNISAで投資した商品は新NISAとは別枠で非課税となります。
たとえば、2018年から2023年までつみたてNISAを満額投資していた人は新NISAの1,800万円とは別に240万円(40万円×6年)も非課税として20年持ち続けることが可能です。
2023年までのNISA | 2024年からのNISA | |||
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
買付可能期間 | 2023年末 | 恒久化 | ||
非課税期間 | 5年 | 20年 | 無制限 | |
年間投資額 | 120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有限度額(総枠) | 600万円 | 800万円 | 合計1,800万円 内、成長投資枠の上限は1,200万円 | |
投資対象 | 株式・投資信託 | 投資信託 | 株式・投資信託 | 投資信託 |
参照:金融庁 新しいNISA
まとめ
NISAについて次の内容を解説してきました。
- 一般NISAとつみたてNISAの違い
- つみたてNISAのメリットとデメリット
- つみたてNISAの投資シミュレーション
- つみたてNISAの始め方
- 2024年以降の新NISAとの違い
NISAには「つみたてNISA」と「一般NISA」の2種類があり、どちらも投資による利益に対して税金がかかりません。
つみたてNISAは厳選された金融商品に定期的に積立投資ができ、20年間非課税です。しかし、リスクとして元本割れや損益通算ができない点があります。
2024年から新NISAが始まりますが、現行のつみたてNISAで購入した資産は別枠で持ち続けられます。新NISAの非課税保有限度額は1,800万円ですが、つみたてNISAを今開始すれば1,840万円まで非課税投資が可能です。
投資は長期間行うほど複利の効果が効くため、早く投資を始めた方が非課税の恩恵をより多く受けられます。
NISAをまだ始めていない人は、早めにNISA口座の開設を検討してください。NISA制度を活用して、子供の教育費や将来の老後資金の資産形成に役立てましょう。
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