家賃収入に魅力を感じ、不動産投資に興味がある人の中には
「家賃収入にはどんな税金がいくらかかるんだろう?」
「確定申告は必要?やったことがないから不安」
このような疑問や悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では賃貸経営を検討している人に向けて、家賃収入にかかる税金と税金の算出方法を解説します。
この記事を読めば、不動産収入に関する税金の理解が深まり、いくらかかるかシミュレーションできるようになります。
確定申告方法も説明するので、不動産投資への不安が減り、賃貸経営への一歩を踏み出すきっかけになるでしょう。
家賃収入にかかる税金の種類
不動産を貸し出して家賃収入を得る場合は所得とみなされ、税金がかかります。
税金は家賃収入に直接かかるわけではなく、家賃収入から必要な経費を引いた不動産所得にかかります。不動産所得に対してかかる主な税金は以下の3種類です。
- 所得税
- 住民税
- 消費税
それぞれの税金のしくみを詳しく解説します。しくみが分かれば、不動産所得にかかる税金の計算に役立ちます。
所得税
所得税は個人の所得に対してかかる税金です。家賃収入を得た場合は、家賃収入から必要な経費を引いた不動産所得に所得税がかかります。
所得税の課税対象となる所得は、1年間のすべての所得を合計して算出します。不動産所得以外にも給与や他の事業による所得がある場合は、合算した金額が課税所得です。
たとえば、家賃収入を含めた年間の不動産所得が100万円、その他に給与所得が600万円あった場合は1年間の合計所得700万円が課税所得です。
所得税の金額は課税所得に税率をかけて算出します。所得税の税率は、課税所得が多くなるにしたがって段階的に税率が高くなる累進課税制度によって決まり、適用される税率は5%〜45%です。
住民税
住民税は1月1日時点で住民票がある自治体に納付する税金です。家賃収入を得た場合は、家賃収入から必要な経費を引いた不動産所得に住民税がかかります。
住民税は「所得割」と「均等割」で構成されており、所得割の課税対象となる所得は、1年間のすべての所得を合計して算出します。
不動産所得以外にも給与や他の事業による所得がある場合は合算した金額が課税所得です。
税率は自治体によって多少異なりますが、ほとんどが10%です。東京都の場合も税率は10%(都民税4%、区市町村民税6%)となっています。
均等割は定額5,000円が課税されます。東京都の場合、均等割の内訳は都民税が1,500円、区市町村民税は3,500円です。
消費税
家賃収入が消費税の課税対象となるかどうかは、賃貸する物件の種類と売上高によって決まります。
賃貸する物件が住宅物件の場合、消費税の非課税対象です。マンションやアパートを賃貸して得られる家賃収入には消費税が適用されません。
一方、賃貸する物件が住宅物件以外の場合、原則として消費税の課税対象です。事務所や店舗から得られる家賃収入には、原則として消費税が適用されます。
たとえば1つの物件に店舗と住宅が入っている場合、住宅部分のみが非課税で店舗部分は消費税の課税対象です。店舗と住宅どちらも入っている物件の場合は、家賃を住宅部分と店舗部分とを区別して管理する必要があります。
しかし、住宅物件以外でも消費税の納税が免除される場合があります。個人事業主は前々年の売上高が1,000万円以下の場合、消費税の納税義務が免除されるので覚えておきましょう。
家賃収入にかかる税金の計算方法5ステップ
家賃収入にかかる税金は次の5ステップで計算できます。
- 家賃収入に含まれるものを計算する
- 経費として計上できるものを計算する
- 不動産所得を計算する
- 所得税を計算する
- 住民税を計算する
手順ごとにわかりやすく解説します。税金を計算する過程が分かると、家賃収入にかかる税金への理解が深まり、節税方法も身につくでしょう。
ステップ1:収入を計算
家賃収入には主に次のものが含まれます。
- 賃貸料
- 更新料
- 敷金、礼金
- 共益費
家賃収入は物件を貸すことによって得られる賃借料だけではありません。契約更新にかかる更新料や敷金、共益費なども含みます。
ただし、敷金は入居者へ返さない分のみが対象です。礼金はお礼の意味で支払われるお金のため入居者へ返すことはありません。
共益費は入居者が家賃と合わせて毎月支払い、共用部分の維持管理費用として水道代や掃除代などで使われます。
ステップ2:経費を計算
賃貸経営をするうえで主に次のものは経費として計上できます。
- 固定資産税
- 損害保険料
- 減価償却費
- 修繕費
固定資産税は1月1日時点で土地や家屋を所有している人にかかる市町村税です。
損害保険料は建物を補償対象とする火災保険の保険料が経費になります。
減価償却とは建物の取得にかかった費用を一定の方法で毎年必要経費として配分していくことです。建物の取得にかかった金額は、取得したときに全額必要経費にせず、建物が使用可能な期間に分割して必要経費とします。
修繕費は修繕する目的や結果によって修繕として認められない場合があるため、経費になるかどうかの判定に注意が必要です。
通常の維持管理や修理のために使う費用は修繕費として必要経費になります。しかし、建物の使用可能期間を延長させたり、価値を高めたりする費用は修繕費とは区別され、別の経費に分類されます。
ステップ3:不動産所得を計算
不動産所得は収入から経費を差し引いて算出され、以下の式で求められます。
不動産所得の金額=家賃収入ー必要経費
家賃収入には家賃以外にも更新料や敷金・礼金、共益費などがあります。必要経費は固定資産税や火災保険料、減価償却費や修繕費などです。
家賃収入そのものに税金がかかるわけではなく、必要経費を差し引いた不動産所得を基に税金が計算されることを理解しておきましょう。
ステップ4:所得税を計算
所得税を計算するには、1月1日〜12月31日までの1年間すべての所得を合算しなければいけません。
会社員が副業で賃貸経営をする場合は、不動産所得と給与所得を合算してから税額を求めます。
最初に所得税の計算方法をみてみましょう。所得税は以下の式で求められます。
所得税=課税所得金額×税率ー控除額
課税所得金額は不動産所得を含めたすべての所得から各種の所得控除を差し引いた金額です。
会社員が賃貸経営する場合は給与所得から基礎・家族控除や社会保険料等の所得控除を引いて求めた課税所得と不動産所得を合算した額が課税所得金額になります。
税率は課税所得に応じて変わる累進課税制度が採用されており、所得が増えるにつれて税率は高くなります。所得税の課税所得と税率、控除額は以下の表のとおりです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
参照:国税庁 所得税の税率
ステップ5:住民税を計算
次に住民税の計算方法を確認しましょう。住民税は以下の式で求められます。
住民税=課税所得金額×税率(10%)
課税所得金額は、所得税のときと同じように不動産所得を含めたすべての所得を合算します。会社員が賃貸経営する場合は給与所得と不動産所得の合計が課税所得になります。
住民税の税率は地域によって多少異なりますが、基本的には10%です。1年間のすべての所得に10%をかけて住民税の税額を計算します。
家賃収入の税金計算シミュレーション
家賃収入の税額を以下のケースでシミュレーションしてみましょう。
- 35歳の男性会社員
- 扶養家族2人(妻・娘)
- 副業で賃貸経営を始め、家賃収入を得る
会社員の給与所得は以下の条件とします。
給与支払額:550万円
控除額合計:358万円
給与の課税所得額:192万円
給与所得と不動産所得の他に別の収入はないものとします。
家賃収入が100万円の場合
家賃収入が年間100万円だった場合をシミュレーションしてみましょう。
必要経費を10万円とした場合、所得税は184,000円、住民税282,000円の合計466,500円が課税額です。
最初に不動産所得の金額を計算します。
家賃収入(100万円)ー必要経費(10万円)=不動産所得90万円
次に所得税と住民税を計算するため、課税所得を計算します。課税所得は給与所得と不動産所得を合算し、以下の式で計算できます。
給与所得192万+不動産所得90万円=課税所得282万円
課税所得282万円の場合、所得税の税率は10%、控除額は97,500円です。
課税所得(282万円)×税率(10%)ー控除額(97,500円)=所得税184,500円
住民税の税率は10%で計算します。
課税所得(282万円)×税率(10%)=住民税282,000円
所得税184,500+住民税282,000=課税合計額466,500円
所得税は184,000円、住民税は282,000円の合計466,500円が算出されました。
家賃収入が300万円の場合
家賃収入が年間300万円だった場合をシミュレーションしてみましょう。
必要経費を60万円とした場合、所得税は436,500円、住民税432,000円の合計868,500円が課税額です。
最初に不動産所得の金額を計算します。
家賃収入(300万円)ー必要経費(60万円)=不動産所得240万円
次に所得税と住民税を計算するため、課税所得を計算します。課税所得は給与所得と不動産所得を合算し、以下の式で計算できます。
給与所得192万+不動産所得240万円=課税所得432万円
課税所得432万円の場合、所得税の税率は20%、控除額は427,500円です。
課税所得(432万円)×税率(20%)ー控除額(427,500円)=所得税436,500円
住民税の税率は10%で計算します。
課税所得(432万円)×税率(10%)=住民税432,000円
所得税436,500円+住民税432,000円=課税合計額868,500円
所得税は436,500円、住民税432,000円の合計868,500円が算出されました。
家賃収入の確定申告方法
家賃収入がある場合、収益が出ていなくても確定申告するとメリットがあります。
確定申告が必要な理由と確定申告方法を解説します。これを読めば、確定申告への不安が軽減され、賃貸経営をより具体的に考えられるでしょう。
確定申告の必要性
家賃収入により不動産所得が年間20万円以上となる場合、確定申告が必要です。
しかし、不動産所得が赤字の場合も税金の還付が受けられる可能性があるため、確定申告した方がメリットがあります。
たとえば、経費がかさみ支出が家賃収入を上回って赤字でも、不動産所得の他に黒字の所得があれば不動産所得の赤字と相殺が可能です。
会社員の場合は、給与所得の金額と不動産所得で出た赤字を相殺できます。
違う所得で出た赤字と黒字を相殺するしくみを損益通算といい、収益が出ていなくても確定申告すれば課税所得を減らせます。
また、損益通算してもなお赤字になる場合は青色申告すると損失額を翌年以後3年間繰り越しでき、節税対策が可能です。
青色申告とは確定申告の種類の1つで、他の確定申告に比べてさまざまな節税メリットがあります。
不動産所得で収益が出ていなくても節税につながるため、確定申告しましょう。
必要書類の準備
確定申告書には主に次の書類が必要です。申告書を作成する前に準備しておいてください。
- 源泉徴収票
- 不動産売買契約書
- 賃貸契約書
- 借入金の返済予定表
- 固定資産通知書
- 火災保険の証券
- 収入や経費がわかる通帳など
会社員が副業で賃貸経営を行う場合、給与支払額や控除額を確認する必要があるため、源泉徴収票は大切に保管しておいてください。
また、収入にかかわる書類だけでなく、経費に関する書類も重要です。領収書など、費用や内容がわかるものは無くさないようにしましょう。
申告書を作成
確定申告をするには次の書類が必要です。
- 確定申告書B(第一表、第二表)
- 不動産所得用の青色申告決算書(青色申告の場合)
- 不動産所得用の収支内訳書(白色申告の場合)
必要書類は税務署の窓口や国税庁のホームページにある確定申告書等作成コーナーから入手できます。
また会計ソフトを使うと、納税に不安がある人やはじめて確定申告する人でも簡単に必要書類が作成できるのでおすすめです。
申告書を提出
確定申告の申告書を提出する方法は3つあります。いずれか都合の良い方法を選んで提出してください。
- 税務署の窓口へ提出する
- 郵送する
- eーTAXで送信する
提出できる期間は2月16日〜3月15日です。休日等により期限が異なる場合もあるため、事前にスケジュールを確認しておきましょう。
期限までに提出して納税しないと、税金が加算されるため注意してください。
参照:国税庁 確定申告を忘れたとき
まとめ
家賃収入にかかる税金は「所得税」と「住民税」で、次の5つの手順で計算できます。
- 家賃収入に含まれるものを計算
- 経費として計上できるものを計算
- 不動産所得を計算
- 所得税を計算
- 住民税を計算
家賃収入にかかる税金を算出するには他の所得と合算する必要があり、会社員が賃貸経営をする場合は給与所得と不動産所得を合算します。
所得税も住民税も所得が増えるほど税金は高くなるしくみです。現時点の給与所得で計算するだけでなく、今後の給与所得の変化も考慮してシミュレーションすることが重要です。
計算した結果、不動産所得が赤字になった場合でも確定申告は必要です。損益通算によって他の所得の黒字と相殺できるため、課税所得が減り節税につながります。
しかし、税金の計算は複雑でわかりにくく、確定申告は難しいと感じる人もいるでしょう。
税金の計算に不安がある人やはじめて確定申告する人には会計ソフトがおすすめです。
会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードと同期して経費が自動で入力されます。
確定申告書の作成も必要事項を入力すれば計算は自動で行ってくれるため、計算ミスや記入ミスを防げます。
家賃収入にかかる税金をシミュレーションして不動産投資への不安を解消し、賃貸経営への一歩を踏み出すきっかけにしてください。
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